大学生の頃手にしたある本に、
音楽の「楽」という字には、仏教の言葉で「願う」という意味がある
と書いてああった。
当時は「あぁ、そうなんだ…」程度にしか思っていなかったのだが、実際、音楽を仕事としてやっていくうちに、また音楽を創っていく中で、そのことの意味を自分なりに感じていくようになっている。
もともと「楽」には「かなでる」という意味がありるのは存知の通り。
日本でも古くから「雅楽」や「神楽」など、音を伴った文化がある。
しかし、そこにある「楽」はただ「かなでる」だけのものではない。
仏や神への祈りが込められているわけである。
西洋の音楽も遡れば、やはり「かなでる」だけではなく、そこには祈りが込められている。
「祈る」と「願う」は必ずしも一致するとは思わないが(辞書では同じような意味)、少なくとも、己の気持ちを込めるという点では一致するように思う。
「願う」→「かなでる」→そして、それが受け手の心に伝わる。
作曲者、演奏者、聴衆がそこで何かを共有できた時、音楽が本当に「楽」しいと思えるような気がしている。
(2006年)