一ヶ月前の台風15号で大きな被害を受けた方が大勢いらっしゃる(友人の中にも…)。その傷も癒えぬ中…。
どうか傷が広がらないことを祈るばかりだ。
台風が直撃するたびに思い出すことがある。
福岡で会社員をしていた頃のことだ。
その日は朝から台風直撃のニュースが途切れることなく流れていた。
JRや西鉄(私鉄)の電車は正午を目処に運転を休止する、西鉄バスも本数を大幅に減らして運転することが発表されていた。
勤務していたのは、福岡市の中心部にある広告会社。
新聞広告が主力。毎日何らかの締め切りがあるのだ。
通常通り出勤はしたものの、ハッキリ言って仕事にならない。
しかし、こんな状況でも進めなくてはならない事はある。
クライアントに電話をするも、「申し訳ない、それどころじゃないです。」と。当然だ。
アポイント取っていたクライアントの所に出かけ、「こんな時に何考えているの?」と言われた同僚も。
社内では、幹部がテレビのニュースに釘付け。
大勢の人が電車に駆け込む様子をどこか楽しそうに見ている…(怒)
一向に指示が出る様子もない。
つまり、「普通に仕事していろ!やることはあるだろ?」ということなのか…。
仕方のない面はある。
上述した通り、新聞広告は毎日が締め切り。広告の種類によって若干の違いはあるが、○日掲載分は〇〇日までに入稿と決まっているので、間に合わせなくてはならない(デザインや制作の会社とも連携して)。台風で休刊ということはまずないので(印刷や宅配などの時間が少々遅れることはあっても)、とにかく、どうにかして入稿するしかないのだ。
そして、もうひとつ。
台風の状況、影響や被害を詳細に伝えるため、広告が入るはずだったスペースを記事のスペースに割り当てざるを得ないケース。この場合、(入稿していても)実際に広告が掲載されない。この日は、それが丁度夕刊の記事が締め切られる時間に重なっていた。つまり、その日の夕方に掲載予定の広告が飛んでしまうかもしれない、という状況だったのだ(基本、新聞社から事前に連絡が入るが、状況が状況だけに…)。
そうなれば、当然クライアント対応が必要になる。
「備えておけ!」ということだ、と無理矢理自分を納得させるしかなかった…。
さて、正午を過ぎ電車はストップ。雨風も確かに激しい。
ここで幹部から出た一言に唖然…
「電車もバスも止まったし、仕事にならんから帰っていいぞ!」
「???」
誰も言葉が出ない…。
そして私は、西鉄電車で一駅違いのところに住む女性社員を家まで送るよう指示された。
「どうやって…?」
幸い地下鉄は動いていた。
博多駅まで行けば、そこから彼女が利用する西鉄の駅の近くまで行くバスが出ている。そのバスが動いていることを祈りつつ博多駅に向かう。
待つこと數十分、バスに乗る。
電車なら10数分の距離だが、当然時間はかかる(優に1時間以上…)。
そこからが問題だ。タクシーもない。
困りに果てていたところに、心配した彼女のお父さんから電話が入る。
結局、彼女のお父さんが駅まで来てくださり、私が家まで送ってもらうことになったのだ。
そして、帰宅した時間、暴風域をほぼ抜ける…。
今、自分が組織を預かる幹部だったら、どのような指示を出せるだろうか…?
そして、「備える」とは…?
台風のニュースを見る度に自分に問い掛けるのだ。
とにかく、大きな被害が出ないことを祈るばかり。
(2019年10月10日)