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広島ウインドオーケストラ第44回定期演奏会

広島ウィンドオーケストラの定期演奏会、期待を裏切らない素晴らしいものだった。

演奏もさることながら、聴衆の質が高いことにはいつも感心させられる。

隣りに座っていらした年配の女性、おひとりで来られていたのだが、「このオーケストラは注目しているんですよ」と。吹奏楽関係者ばかりが集う演奏会とは明らかに違う。このような聴衆が増えることで、このオーケストラはますますレベルアップしていくように思う。

もちろん、質の高い活動を地道に続けてきたからこそ、質の高い聴衆が集ってきているのは確か。昨夜も、指揮者、プレーヤー、そして聴衆がいい緊張感と集中力で演奏会に臨んだ感が…。

昨夜の白眉は何と言ってもプレヴィン作品!!

オーケストラの管楽器セクションにサックス、ユーフォニアム、コントラバスを加えた編成。通常の吹奏楽では耳にすることがないサウンドが心地よい。

演奏前、マエストロが笑いも交えながらも的確な解説をしてくれたことも、聴衆がこの作品にいい感じで集中できた要因のひとつ。

お隣の女性も、この作品を一番の楽しみにしていらしたようで、「素晴らしかった。楽しかった。」と。

プレヴィン作品に限らず、昨夜はマエストロが全て解説を述べながらの演奏。昨夜のような定期演奏会では行われることがないのだが、この試みは成功だったと思う。8月の広島市文化賞記念演奏会でのマエストロのトークが(もちろん演奏も)かなり好評だったとのことで、今回試みたとのこと。

演奏前に話しはいらない、という方もいるだろうが、パンフレットに書かれた解説だけでは伝わりにくい指揮者やプレーヤーの曲に対する想いなどを、その人の言葉で知ることができるのはありがたいと感じる。ましてや、普段耳にすることの多い有名なクラシック作品ではないだけになおさら。

もちろん、マエストロの人柄あってのものだ。聴かせてやるぞ、というような態度はいっさいない。聴衆の脳と心を程よく刺激し、作品に向き合う空気を作ってくれる手腕(話術)はお見事。音楽作りは言うまでもない。

昨夜の演奏会、プログラミングから進行、演奏まで全てが聴衆や、大袈裟に言えば世の中へのある種「問いかけ」に溢れていたように思う。こうした問いかけができる楽団、演奏会はなかなかない。私がこのオーケストラの演奏会へ足を運ぶ理由はこんなところにあるんだ、と気づいた。

「問いかけ」とは、確固としたものではない。私自身が感じた問いかけと、他の聴衆の方々が感じた問いかけは同じものである必要はない。

各々が感じた問いかけに対して、各々が自分の中で解答(あまりいい言い方ではないけど…)を出す。それでいいと思う。

マエストロは、フォルテで書かれた甘い(感動的な)メロディを、決して押し付けがましく歌わせようとしない(そう感じる)。

ダイナミクスや色は最終的には聴衆の心が生み出すもの、と考えていらっしゃるのだろうか…?私にはそう思えてならない。

つまりこういうことだ。

しっかりと解釈し、しっかりと主張すれば、物理的な音量に頼らずとも聴衆はフォルテとして感じることができるかもしれない、ということ。楽譜上の記号が物理的な音量のみを求めているわけではないということを再確認。

(2015年12月13日)

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