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冬の記憶


(2021年10月25日)

やはり、というか…音楽は人の記憶や感情を呼び起こすもの、呼び覚ますものであって…。
人はそうして呼び起こされたものと向き合うことで自分の未来を想像・創造していくのだ。
それが音楽の持つひとつの「力」(正直、「音楽の力」という言葉は好きになれないのだが…)だろうと思う。


「記念日」や「アニバーサリー・イヤー」(自身にとっての)というものにはあまり頓着のない人間である私、最近になって、拙作『イマージュ 〜サクソフォーン四重奏のために』が作曲からちょうど20年にあたることに気づいた(この11月初旬が「初演」20周年/出版は2004年)。

一昨年の『Wind Band Press』さんでのインタビューでも触れているが、この作品は私の(創作上の)ターニングポイントのひとつになっている。そして、この曲がなければ、近年アンサンブル・コンテストで取り上げられるようになった『RONDO CHROMATIQUE』(サクソフォーン三重奏曲/Golden Hearts Publications刊)も生まれていない。

実は、『イマージュ』を書いた時期、私の生活は何かと乱れていた。荒れていた、とも言える。当時は会社員であった私、自分の先行きを模索していた時期でもあった。自分のことを誰かに打ち明けるようなこともなかったのだが、後年、この曲に触れた知人に「けんちゃん、この曲書いた頃は乱れていたんじゃない?」と言われ驚いたこともあった。結構見透かされるものなんだなぁ…(苦笑)

私はそれほど多くの作品を書いているわけではない。だからかもしれないが、ひとつひとつの作品を振り返ると、書いた頃の状況や心情は結構蘇ってくる(もちろん差はあるが)。

だから、『イマージュ』を振り返ると、当時を思い出し「寒気」を催したり…
ちなみに、タイトルには添えていないが「冬の記憶」という、いかにも寒そうな副題がこの曲にはある

『イマージュ』が呼び覚ます私の記憶…それはとてもじゃないが人様に誇れるようなものではない。しかし、ひとつ間違うと当時と同じような状況にならないとも限らない。

いや、そうならないために今一度向き合ってみるのだ。

それにしても、第四楽章(下の動画では 5’02”あたりから)の長い旋律(かなり「即興的」…?)、自分ではこれを超えるものをまだ書けていないと思っている。



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