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投稿者: kmasa1006

『音楽を発明した男』をめぐって


(2021年3月23日)

先日は、楽譜の誤植の件に触れたが、Facebookの別の友達のところでは、作品タイトルの「誤訳」についていろいろと話がひろがっていた。

「誤訳」というほどでもないかもしれないが、私には忘れられない曲がある。

ドン・ギリスDon Gillis 1912〜1978)作曲の『The Man who invented Music』というナレーション付きの曲だ。

日本では『音楽の創造者』や『音楽の発明者』といった訳が一般的かな…?

しかし、話の内容からすると、どうもしっくりこないのですよ(笑)

孫娘のウェンディを寝かしつけてゲームを楽しもうとしていたおじいさん。そのウェンディに「(枕元で)お話をして」とせがまれる。お話ではなく子守唄を歌ってあげようとするがウェンディは、「子守唄なんて知らないでしょ?お話をして」と…。「私が子守唄を知らないだって?私は子守唄を発明したんじゃぞ!いやいや、音楽を発明したのはこのわしなんじゃ!」とおじいさん。「じゃあ、どんなふうに音楽を発明したのかお話しして」とせがまれ、400万年前に遡って話を始めるのだ。

オーケストラで使われる楽器や行進曲、ダンス音楽、コンサート、果ては有名な作曲家までが全てこのおじいさんの発明らしい…(笑)

このようなストーリーからすると、「創造者」や「発明者」という訳は少々堅苦しいではないか(笑)。

私はストレートに、『音楽を発明した男』とした。
一気にコミカルな感じが出たような気がする。

「直訳」がしっくりくるケースもきっとあるはずなのだ!


ギリスというと、吹奏楽に携わっている方であれば、『台所用品による変奏曲』が最も知られているかもしれないし、『ジャニュアリー・フェブラリー・マーチ』(以前の吹奏楽コンクール課題曲『マーチ・エイプリル・メイ』のタイトルは、きっとこの曲がなければ生まれなかったと思う)、管弦楽からの編曲ではあるが『交響曲第5 1/2番』、『タルサ 〜石油についての交響的肖像』などをご存知の方もいらっしゃるだろう。また、「カナディアン・ブラス」のアレンジャーであったことを知る人もいるかしら…?

少々ご年配の音楽ファンの方であれば、かのトスカニーニの右腕として「NBC交響楽団」のプロデューサーを務めたり、第2次大戦後初めて来日した海外のオーケストラである「シンフォニー・オブ・ジ・エア」の会長として来日したことをご存知の方もいるだろう(来日時、指揮台にも登って自作を指揮しているようだ)。

ギリスの作品については、近年アメリカのAlbanyから随分とCDが発売されている。

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純粋なクラシック音楽というよりは、「ライト・クラシック」といった範疇の音楽かもしれないが、古き良きアメリカを偲ばせる作品が多い。同時代のモートン・グールド(Morton Gould 1913〜1996)の作品と併せて聴いてみると、アメリカの「大きさ」が感じられるような気がして面白い。

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さて、『音楽を発明した男』であるが…。

私はこの作品を、大分県警音楽隊在職時の定期演奏会で取り上げた。それこそ、写譜があまりにも酷い團伊玖磨氏の行進曲『べっぷ』を演奏した時と同じ演奏会だ。

この曲を取り上げようと思った理由は二つ。

一つ目は、「楽器紹介」的な要素を持った作品であること。

演奏会のアンケートでよく「楽器紹介をしてほしい」と書かれていたこともあり、ひとつずつコメントしながら各楽器に何か一曲やってもらうよりは、一曲の中でやりたかった。
(ただし、原曲が管弦楽なので、サクソフォーンやユーフォニアムの紹介が曲中ではできなかったが…)

二つ目は、県警の警察官に「役者」がいた、ということ。

音楽隊員ではない。ちょうどプログラムの検討に入った頃、地元の新聞でこの警察官が紹介されていた。彼のことはこの記事で初めて知ったのだが、元「歌舞伎」役者だ。片岡愛之助さんのもとで修行したとのこと。記事は、彼が警察官拝命後その経歴を活かし、地域の講話などで他の警察署員らと寸劇を通して「振り込め詐欺」などの被害防止を呼びかけているというものだった。寸劇を取り入れた講話は、どこの警察でもよく行われているだろうし、大分県警には各警察署に「○○劇団」というものがある(あった)。音楽隊の演奏会に出演していただくこともよくあった。

「彼に手伝ってもらいたい」と思い、上司に相談し彼が所属する警察署に交渉。ありがたいことに即決だった。



ナレーションの台本は私が和訳して準備したが、なかなか難しい…(笑)しかし、楽しくもある(本音を言えば、「大分弁」を存分に取り入れたかったのだが…笑)。

三交代勤務で大変な中、そして、ナレーションだけということで少し勝手が違う中、彼はしっかりと準備をしてくれた。彼は、当直明けや休みの日に音楽隊まで足を運んで練習に参加してくれた。練習後には「しっかり稽古します!」と(「稽古」というのがいいね! ちなみに、私は今だに「訓練」という言葉が出てしまうことがある)。

『音楽を発明した男』の本番、彼のおかげで(演奏のキズは多かったが…笑)お客様に喜んでいただけた(と私自身は思っている)。


随分遠回りをしたようだが、ここからが本題。

『音楽を発明した男』、実は準備段階で、演奏する側に曲に対する「拒否反応」があるのを感じていた。皆、口には出さないが、そんな空気は漂っていた(笑)。

まぁ、私の想いが強すぎたのかもしれないが…。
(楽譜を自分で買ったくらいだからそんな雰囲気になっても仕方ないか…笑)

奏者の中には、自分が「知らない曲」を取り上げることに「拒否反応」を示す者が必ずいるのは事実だ。しかし、「今知っている曲だってもともとは知らない曲だったのでしょう?」と問うてみたい(笑)。
その人にとっては、曲を知る「きっかけ」がどのようなものだったかが重要であるようだ(大抵、吹奏楽コンクールで流行ったから、昔やったことがあるから、というのがオチだ…笑)。
「楽長が持ってきた曲」というのがどうも引っかかる、というのもあるだろう(笑)。
まぁ、その気持ち、分からないでもない。



私が、演奏する側として、あるいは選曲する者として心がけているのは、過度に「ノスタルジック」にならない、ということだ。そして、「好き嫌い」を言っていては仕事にならない、ということ。

ただでさえ、警察音楽隊の演奏会には「吹奏楽」とは、「クラシック音楽」とは日頃関わりの少ないお客様が多く足を運ばれる。皆様は「警察音楽隊」というジャンルを楽しみにしておられる(と私は強く思っていた)。
そのお客様も多くは「知っている曲」を望まれる。しかし、演奏者側が強い想いを持って選曲し、演奏すれば多くのお客様が心に留めてくれるということも随分体験した。
だから、吹奏楽界隈で流行った曲を何が何でも締め出す、ということもしなかった(演奏してみて考えが変わることもあるので)。

誰も知らない曲を取り上げることが目的でもないのだ。どのような想いでその曲を取り上げるか…。そこが大切なのは言うまでもない。

『べっぷ』だって『音楽を発明した男』だって、私は演奏したことはなかった。それでも、その時は「これらを演奏することは意味あることだ」との想いが強かったのだけは確か。

「流行っているから」、「昔やったことがある」と曲(実はこれだってお客様のほとんどが知らないであろう)を持って来る者に、その意図を訪ねてみると、大抵嫌な顔をされるし(笑)。
そこに確固たる理由はない。「やりたいから」が理由だ…。
ただ、それはそれで否定はできないところもある。大きなホールで演奏できる機会は年1回、ふだん演奏できない曲に取り組める貴重な機会でもあるので。

それにしても、『音楽を発明した男』の練習の際、彼のナレーションに接した時の空気の変わりようと言ったら…(笑)。

「知らない曲」だったからこそ味わえた「変化」だったと今でも思っている。

何やらとりとめのない文章になってしまったが、「知らない曲」を取り上げることの意義、難しさ、いろいろと考えさせられたなぁ、と少々「ノスタルジック」に気分になる…(苦笑)。

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(Facebookへの投稿を一部加筆・修正の上転載しました。)



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誤植


(2021年3月19日)

昨日一昨日とツイッターの方で写譜があまりにも酷い楽譜(團伊玖磨氏の行進曲)のことをつぶやいていたところ、Facebookの方では、(友達の)鍵盤奏者の方が、ご自身が演奏された『ダフニスとクロエ』のパート譜の誤植について触れておられた。老婆心ながらちょっと調べてみると、初版の際のミス(チェック漏れ)が修正されずにいるのではないか、ということが分かった(もちろん、断定はできない)。

彼女が演奏なさったのは「第2組曲」。実際に使用された楽譜は一昨年廃業したKalmus 社による「全曲版」のリプリントのようだ。

「第2組曲」の開始4小節は4分の4拍子(5小節目からは3拍子)なのだが、彼女の楽譜には最初から3拍子の表記。しかも、5小節目から段が変わるので「拍子変更」の予告もきちんと記されている。いやいや、困ったものです…

ところが、「第2組曲」単独の出版(1913年)の際にはこの誤りが修正されているのだ。しかも譜面をよく見ると、全曲版の版を利用しているのではないか、と思えるのだ。


ここからはあくまでも推測。

作曲の遅れもあり、ラヴェルと、ディアギレフ、フォーキンらとの間には結構「すきま風」が吹いていたようだ。バレエの上演も当初の予定から随分遅れたらしい(ちなみに、バレエ初演に先んじて「第1組曲」が公の場で演奏されていたようで、これが振付家フォーキンの怒りを買うことにもなったようだ)。

ラヴェルともなると、作曲したスコアから自分でパートを作ったりはしないだろう。書き上げたスコアはそのままDurand社に持ち込まれ、演奏用のパート譜が作られていたはずだ(ディアギレフがDurandとの契約破棄をほのめかしたことがあることから、当初からDurand社が関わっていたことは確かだろう)。

全曲の完成はバレエ初演予定日の2ヶ月前、ここから演奏用のパート譜を作るというのはかなり厳しい。時間との闘いだ。チェック漏れは必ず起こるというものだ。通常行われるはずの「校正」だって行われることはなかったのではないか…?
(現代のように、数日、内容によっては数時間でパート譜が作れるような時代ではないですからね…)

断定はもちろんできないが、よく耳にするDurand社の誤植の多さはこんなところに起因するのではないか…?


初演に際し問題点は出てくるものだ。それをチェックし、修正してようやく「出版」ということになるのが普通なのだろうが、どうも、この工程が抜けているのかな…?

確かに、一旦彫版したものに修正を加えることは大変だと思う。

ここでシェアした動画は、Henle社が公開しているものだが、おそらくDurand社でも当時同様の工程で楽譜が作られていたと思われる。なかなか骨の折れる作業ではないか。

Sharp as a tack – Japanese version

『ダフニスとクロエ』も当初は上演用に楽譜が作られはしたものの、最初から大量に印刷されたとは思えない(もちろん弦楽器などはプルト分刷られたはずだが)。バレエがしばらく再演されなかったことから、楽譜も重刷されることはなかったのかもしれない。

「第2組曲」はバレエ初演の翌年(1913年)に出版されている。バレエ第3場の音楽をほぼそのまま抜き出しているので、「全曲版」の版(銅版?)を利用していても不思議ではない。この時いくらかのチェックはなされたはずだ、時間的な余裕もいくらかあっただろうから。少なくとも単純ミス(例えば上述の拍子の間違いなど)は修正されているのだろう(細かく調べたわけではないのでご容赦を)。

ということは、「全曲版」を再版する必要が出た場合、新たに彫版する必要が出てくる。しかし、動画を見ていただくとわかる通り…手間とコスト、そして今後どれほど再演されるのかということを考えるとなかなか…ですよね。しかし、作品にとっては少々不幸なことかもしれないよなぁ、と思ってしまう。

結局、間違ったままの楽譜がいまだに流通している…。せめて「正誤表」みたいなものでも出版社が提供してくれれば、なんて思うのは私だけではないだろう。そもそも「第2組曲」を出版する際、どこがどう修正されたかの記録は残されていないのだろうか?


私は、冒頭に触れた写譜の酷い團伊玖磨氏の行進曲について、ホームページ内でそのことを綴った際こう締めくくっている。

「質の高い作品は大抵楽譜もしっかりしているものだ。」

どうやら、考えを改めないといけないようだ(笑)

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カレル・フサに会った日


(2021年3月9日)

ここに紹介するパンフレット、これは、1987年に行われた『イェール大学コンサート・バンド』の日本ツアーのものだ。
バンドにとって初めての「アジア演奏旅行」だったそうで、5月下旬から6月上旬にかけて、天理、金沢、松任、小松、宇都宮、東京で演奏会を行い、またレコーディングも行なっている。東京以外の地では、地元の高校と交流を深めたようだ。そして、録音はCDとして、同じ5月に来日したオハイオ州立大学のバンド(こちらは私の母校・武蔵野音楽大学でも演奏会を行った)のものと同時発売されたはず…。

当時私は大学3年生。秋山紀夫先生の講義を受講しており、その時の受講生数名と一緒に6月7日、東京・バリオホールでのツアー最後の演奏会を鑑賞した。

この日の演奏会は、「日本吹奏楽指導者協会」の総会に併せて開催されたもので、本来は「関係者のみ」なのだが、秋山先生にお世話いただき鑑賞することができたのだ(あくまでも授業の一貫として)。

このパンフレット、一応右開き(A4タテ)になっています。

表紙の絵、これはイェール大学がコレクションしている『PARADE OF THE RUSSIAN MISSION’S BAND IN JAPAN』(日本語の題がわかりません…)。

作者は、長崎でかのシーボルトの日本に関する研究を支えたとされる画家(絵師)川原慶賀(かわはら けいが)。彼が1850年頃に制作した木版画(多色)だ。
(こうした情報までパンフレットにきちんと載せているのはさすが!)

なかなか粋な作りのパンフレット(の表紙)だ。

右上にあるのは、この日のみ出演したカレル・フサユージン・ルソーの直筆サインだ!!

フサ自身の指揮で『プラハ1968年のための音楽』と『アルト・サクソフォーン協奏曲』を聴くことができただけでもありがたいのに、休憩中だったか終演後にロビーでにこやかに応対してくれた両氏。
(英語を話すことができれば…と、心底悔やんだのはこの時が初めてかもしれない。)

そして、フサのあの優しい笑顔と、『プラハ〜』のような厳しい作品とのギャップにも驚いたものだ。

今になって思うこと…、

それは、『プラハ〜』のような作品が次々と生まれるような世界にしてはならない、ということだ。そして、『プラハ〜』のような作品を通じて過去に学ぶことを忘れてはならない、ということも…。

音楽だけにとどまらず、文化・芸術は「時代の証人」という側面がある。庶民と時の権力者との「対話」でもあるのではなかろうか…。時にはそんなことを意識しながら音楽に向き合ってもいいかな、などと思っている。

そうそう、ルソーが西暦ではなく「S 62」と元号で日付を書いているのに気づきましたか?

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『ディオニソスの祭り』のこと


(2020年11月21日)

 ベートーヴェンの生誕250年の陰に隠れてしまっているが、今年はフローラン・シュミット(Florent Schmitt)の生誕150周年にあたる。吹奏楽に関わる者にとっては避けて通れない作曲家のひとりだ。

 この記念の年を特に意識していたわけではないのだが、私はこの夏から『ディオニソスの祭り(Dionysiaques)』について少し調べていた。

デュラン社版スコアの最初のページ(1925年出版)

 この作品、「ギャルド ・レピュブリケーヌ吹奏楽団のために作曲された」とされている。国内はもとより、海外での認識もほぼそれで通っている。

 この説明(解説)でひとつ引っかかるのが、「ギャルド」がシュミットに委嘱したのか否かがはっきりしないことだ。私はずっと疑問に思っていた。

 シュミットの作品(出版譜)の多くには、タイトルの上か左側に献呈の辞が記されている(これは何もシュミットに限ったことではないだろう)。『ディオニソス』は1913年に作曲されてはいるものの、初演は1925年。その年にデュラン社から出版されているが、特に献呈の辞は記されていない(シュミットの他の管楽作品の出版譜には記されている)。もちろんこれだけで、何か結論が出せるというものではない。

 ちなみに、初演前の1917年にはシュミット自身の手による4手ピアノ版がデュラン社から出版されており、ここには レオン=ポール・ファルグ(Léon-Paul Fargue)という詩人への献呈の辞が記されている。

4手ピアノ(連弾)版(デュラン社版)

 疑問に思う理由がもうひとつあった。

 1973年から1997年まで「ギャルド」の楽長を務めたロジェ・ブートリー(Roger Boutry)のインタービュー記事を読んだ記憶だ。そこにはこう書かれてあった。

「『ディオニソス』はシュミットが全く自発的に書いたもので、演奏が難しいことから「ギャルド」が初演することになった。」(要旨)

 私がこの記事を読んだのはおそらく、高校生から大学生の時期。『バンドジャーナル』誌ではなかったかと思う。『バンドジャーナル』誌はほぼ毎月購読していた。

 「ギャルド」は1984年(私は高校3年生)に2度目の来日を果たした。私の故郷・福岡でも公演があり聴きに行った(会場は、大相撲も開催される「福岡国際センター」)。インタビューが掲載されていたとすれば、この年以降のことだろう(ブートリー在任中に数回来日している)。

 ということで、『バンドジャーナル』誌の赤井淳副編集長に「記事を見ることはできないか?」と、相談してみた。

 赤井副編集長はお忙しい中快く記事を探してくださった。しかし全く見当たらない…。「日本の吹奏楽の生き字引」ともいえる秋山紀夫先生(私も大学時代に随分お世話になった)にまで尋ねてくださったそうだが、秋山先生も、「そのような記事は全く記憶にない」とのこと。
(まさか、違う雑誌だったのか…?それとも私の全くの勘違い…?)
 お手を煩わせてしまったこと、本当に申し訳なく思っている。



 私は思い切って、「ギャルド」に直接尋ねてみることにした。

 フランスでもコロナ感染が続き楽団の活動もままならない中、少し時間はかかったが、丁寧に対応していただいた。

 結論を言うと、「記録が残っていないため解答不能」とのこと(作曲されたのが100年以上前のことだから、それはそれで仕方ない…)。
 ただし、「楽団のために作曲された」との認識ではあるようだ。

 私の疑問は解消されなかったのだが、思わぬ副産物が!

 「ギャルド」が現在使用している『ディオニソス』のパート譜を送ってきてくれたのだ。

 ブートリー体制下で「ギャルド」の編成は大きく変わった(サクソルン族の削減)のだが、それによりどのように楽譜に手が加えられているかを知ることができる。

 それら全てをここで公開することはできないのだが、パートによって、オリジナル(1925年出版)のパート譜を使っていたり、手書きされたものや、コンピューター浄書されたものがあったりと興味深い。スコアはオリジナルのままだという。

 今後時間を作ってじっくり調べてみようと思う。そして、可能な限りホームページの方で紹介できれば、と思っている。

 それにしても、「本家」の「ギャルド」でさえ今やオリジナルの編成で『ディオニソス』を演奏することができない状況にあることには少々寂しさも感じる。しかし、考えてみれば、私たちはバッハやベートーヴェンの作品を現代の楽器で演奏するのが当たり前だ(当時の楽器を使った演奏にも私は魅力を感じるが)。
 吹奏楽がこれからどのような変化を見せるかは正直わからないが、時代の変化に耐えうるだけの内容、価値を『ディオニソス』が持っていることだけは確かだ。大切にしていかねば。

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about sheet music of ” BE COOL ! “


Dear friends

Inquiries regarding the sheet music for “BE COOL !,” which will be performed at the “New Music Reading Sessions,” should be directed to the composer at.

k1006masakado@gmail.com

When inquiring, please include in the subject line “BE COOL ! ~ sheet music” .
And be sure to include your name and the name of your band in the body of the message.

Thank you very much.

Ken’ichi Masakado


Other published works can be purchased from the following websites
Golden Hearts Publications Global Store
Score Exchange
Sheet music direct

Bravo Music
Scomegna Edizioni Musicali s.r.l.


2022年


(2022年12月17日)
8月に下野竜也氏指揮/広島ウインドオーケストラの皆さまにより世界初演されましたToward the Blueの演奏動画が公開されました。
 8月23日 北九州ソレイユホール


(2022年10月11日)
八重奏曲『ラクリモーソ』の楽譜がGolden Hearts Publicationsさまから出版されました。
楽器編成/Fl, Ob, Cl, Bsn, A-Sax, T-Sax, Br-Sax, Cb
(演奏時間:約4分40秒)


(2022年10月5日)
10月2日(日)に開催された「ユリックス吹奏楽団コンサート」で客演指揮の機会をいただきました。


(2022年9月28日)
金管八重奏曲『トワイライト・グロウ』の楽譜がGolden Hearts Publicationsさまから出版されました2004年に作曲した、ジャズテイストを持った作品、2Tp 2Hn 2Tb 2Tubという編成です。 (演奏時間:約4分40秒)


(2022年8月17日)
Toward the Blue下野竜也氏指揮/広島ウインドオーケストラの皆さまにより世界初演されました。
 8月23日 北九州ソレイユホール
 8月25日 出雲市民会館 大ホール


(2022年8月17日)
『シャイニング・ソウル4』が8月27日と28日に、イタリアの「Musica Insieme」という若手音楽家(〜24歳)のためのバンド音楽キャンプのクロージング・コンサートで演奏されます。指揮は「国際行進曲作曲コンクール」芸術監督で審査委員長のマルコ・ソマドッシ氏です。


(2022年6月30日)
下野竜也氏指揮/広島ウインドオーケストラの皆さまが、8月に北九州と出雲での特別公演で『Toward the Blue』を取り上げてくださいます。今回が世界初演です。


(2022年6月1日)
行進曲「神宿る島より」(みあれマーチ )の演奏動画が公開されました(私が指揮した当日2度目の演奏の模様です)。


(2022年5月15日)
公益財団法人宗像ユリックス(福岡県)の委嘱による行進曲「神宿る島より」(みあれマーチ )が「九州管楽合奏団演奏会2022」において初演されました。


(2022年4月28日)
2008年に作曲した『Toward the Blue』がイタリアのScomegna Edizioni Musicaliさまから出版され、販売開始となりました。
「空をイメージしたコンサート・オープナーを」との要望を受け作曲したものです。


(2022年4月10日)
公益財団法人宗像ユリックス(福岡県)の委嘱による新作(行進曲)が、5月15日(日)、「九州管楽合奏団演奏会2022」において初演されます。指揮は中田延亮氏。
「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の世界遺産登録5周年を記念した作品です。


(2022年4月1日)
大分県庁職員吹奏楽団定期演奏会2022」にて拙作『シャインイング・ソウル4』を指揮することになりました。この演奏が「日本初演」となります。


(2022年3月7日)
Red Maple音楽コンクール(2022年冬)」(カナダ・トロント/オンライン)の作曲(上級)部門で、『Prayer … and Visions』(ブラス・バンドのための作品)が「第3位」を受賞しました。


(2022年3月2日)
Rocky Mountain音楽コンクール(2022年冬)」(カナダ・トロント/オンライン)の作曲(上級)部門で、『シャコンヌ 〜唱歌「砂山」による』(クラリネットとピアノのための作品)が「第3位」と「聴衆賞」を受賞しました。


(2022年2月25日)
コンサート・マーチ「シャイニング・ソウル 2」
行進曲「ステップ・フォー・ステップ」
の2作品が、「Golden Hearts Publications」さまから販売開始されました。


(2022年2月20日)
Royal Sound音楽コンクール(2022年冬)」(カナダ・モントリオール/オンライン)の作曲(上級)部門で、『ソナタ・メカニカ 〜独奏ユーフォニアムのための』が「第2位」を受賞しました。


(2022年2月10日)
1999年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲『行進曲「エンブレムズ」』の著作権が「一般社団法人全日本吹奏楽連盟」より返還されました。現在一般販売されていません。作品の管理は当面作曲者自身が行いますので、楽譜をご入用の方、あるいは編曲や改編等のご相談は当方宛て直接ご連絡ください。
「課題曲」版の楽譜はそのまま引き続きご使用できますが、本作品の著作権の管理は「一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)」に信託しておりますので、上演や録音・録画等に際しましてはこれまで通りのお手続きが必要です。


(2022年1月25日)
第1回 Tiziano Rossetti国際音楽コンクール」(スイス・ルガーノ/オンライン)の作曲部門で、『巡礼:春 〜ヴァイオリン、チェロとピアノのために』が「第2位」を受賞しました。



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2020〜2021年


2021年12月23日

トリニティ国際音楽コンクール」(カナダ・トロント/オンライン)の作曲(プロフェッショナル)部門で、『ソナタ・メカニカ 〜独奏ユーフォニアムのための』と『巡礼:春 〜ヴァイオリン、チェロとピアノのために』の2作品が「金賞」を受賞しました。

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2021年7月20日

「第6回国際行進曲作曲コンクール “Città di Allumiere”」コンサート・マーチ部門「第2位」受賞曲『シャイニング・ソウル 4』の楽譜がイタリアのScomegna Edizioni Musicaliさまから出版され、発売開始となりました。
日本国内では”WBP Plus”さまが取り扱っています。詳しくはこちらから
また、音源を聴きながらスコアを閲覧できる「Video Score」も公開されています。


2021年6月22日

「第6回国際行進曲作曲コンクール “Città di Allumiere”」コンサート・マーチ部門「第2位」受賞についての特別インタビュー”Wind Bnd Press”さまに掲載されました。


2021年6月13日

イタリア・アッルミエーレで開催された「第6回国際行進曲作曲コンクール」において、拙作『コンサート・マーチ ”シャイニング・ソウル 4”』がカテゴリーA(コンサート・マーチ部門)の「第2位」となりました。詳細はこちらから。


2021年4月22日

書き下ろしの新作、『ソナタ・メカニカ 〜独奏ユーフォニアムのための』の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり)


2021年4月16日

イタリアで開催されている「第6回国際行進曲作曲コンクール」でファイナリストに選出されました。詳細はこちらから。


2021年3月8日

「Wind Band Press」さまに寄稿、「スコアのしくみ:音楽を形づくる要素(4)テンポ(1)」:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方(その6)というタイトルで公開されました。


2020年12月10日

「バンドジャーナル 」誌 2021年1月号(本日発売)の「コンサート・レビュー」に『広島ウインドオーケストラ 第54回定期演奏会』のレポートを寄稿しています。


2020年12月2日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『音楽はどのように聴取される? 〜音楽理論とともに知っておきたいこと」:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方(その5)』というタイトルで公開されました。


2020年11月26日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『コロナ禍を私たちはどう生きたか~未来に残すそれぞれの記憶~:アンサンブル太陽さん(吹奏楽団)へのインタビュー』というタイトルで公開されました。


2020年10月26日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『プロとしての矜持を見た!広島ウインドオーケストラ第54回定期演奏会(2020/10/24)舞台裏レポート』というタイトルで公開されました。


2020年10月10日

「バンドジャーナル 」誌11月号(本日発売)の「TOPICS」に『アップデート』というタイトルで寄稿しています。


2020年10月5日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『「スコアのしくみ:音楽を形づくる要素(2)音の配置全般」:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方(その4)』というタイトルで公開されました。


2020年10月1日

木管四重奏曲『牧歌 〜わすれなぐさの物語』の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり)


2020年8月11日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『スコアのしくみ:音楽を形づくる要素(1)拍子・調性」:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方(その3)』というタイトルで公開されました。


2020年8月7日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『「スコアを読む前に&『感情を込めて』とは?」:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方(その2)』というタイトルで公開されました。


2020年7月17日 

吹奏楽(アレンジ)『ジュ・トゥ・ヴ』(サティ作曲)の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり/スコア閲覧可能)


2020年6月4日

室内楽『巡礼:春 〜ヴァイオリン、チェロとピアノのために』の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり)


2020年5月20日

管楽器独奏&ピアノ作品『ヴォカリーズ1:こもりうた』(トロンボーンまたはユーフォニアム&ピアノ)と『ヴォカリーズ2:きぼう』(オーボエ&ピアノ)2作品の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(ともに試聴音源あり)


2020年5月13日

「Wind Band Press」さまに寄稿、『「なぜスコアを買って勉強した方がいいの?」作曲家・指揮者:正門研一氏が語るスコアの活用と向き合い方』というタイトルで公開されました。


2020年4月14日

4月9日に販売開始された『モノローグ 〜独奏ユーフォニアムのために』を、今村耀さんが録音、音源を提供してくださいました。(こちらから


2020年4月9日

モノローグ 〜独奏ユーフォニアムのために』の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり)


2020年3月19日

吹奏楽『行進曲「サリューテイション」』の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり/スコア閲覧可能)


2020年2月4日

吹奏楽『メモリアル・マーチ「ニケの微笑み」』の楽譜が「ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ」さまから販売開始となりました。(試聴音源あり/スコア閲覧可能)



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第6回国際行進曲作曲コンクール”Città di Allumiere”                「コンサート・マーチ部門」ファイナリスト紹介


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(2022年5月1日記)

2021年🇮🇹イタリアのアッルミエーレで開催された「第6回国際行進曲作曲コンクール”Città di Allumiere”」、その「コンサート・マーチ部門」のファイナリスト5作品をご紹介します。入賞以外の作品の順位は公表されておりませんので、お名前(Last Name)のアルファベット順にしております。

審査員
マッシモ・マルティネッリ氏(カラビニエリ吹奏楽団音楽監督/イタリア)
ヤコブ・デ・ハーン氏(作曲家/オランダ)
マルコ・ソマドッシ氏(作曲家・指揮者/当コンクール芸術監督/イタリア)


第1位
Dolomiti (Georges Sadeler / ルクセンブルク) 


第2位
Shining soul 4 (Ken’ichi Masakado / 日本)


ファイナリスト
IL CAPOBANDA (Walter Farina / イタリア)


ファイナリスト
Rebirth (Davide A. Pedrazzini / イタリア)


ファイナリスト
Take Away (Marco Tamanini / イタリア)



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シモン・ゴールドベルク・ラスト・コンサート:       シモン・ゴールドベルク 指揮/水戸室内管弦楽団

2021年4月12日 記

こちらから購入できます {TOWER RECORDS}

【曲目】
バッハ:管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
モーツァルト:交響曲第40番ト短調K.550
ヒンデミット:弦楽のための5つの小品Op.44-4(器楽合奏のための学校用作品Op.44より)
ハイドン:交響曲第82番ハ長調「熊」
(アンコール)ハイドン:交響曲第82番「熊」より終楽章

【演奏】
シモン・ゴールドベルク(指揮)
水戸室内管弦楽団
工藤重典(フルート/バッバ作品)

【録音】
1993年4月11日、水戸芸術館コンサートホールATM

私が折に触れて読み返す一冊に、『20世紀の巨人 シモン・ゴールドベルク』という本があります。自分が演奏をする上で指針、というか支えになっている本のひとつと言ってもいいでしょう。ご存知の通り、シモン・ゴールドベルク(1909-1993)はその晩年を日本で過ごし、演奏だけでなく教育に尽力された方です。私は残念ながら実演や講演に接することができなかったのですが、没後発売されたCDや書物などで彼の偉大さ(少々語彙が貧弱かもしれませんが…)を感じているところです。

20世紀の巨人 シモン・ゴールドベルク』に収載されている「箴言」集や、彼から薫陶を受けた方々の話(彼の教え)は、本当に貴重です。「考えはいつも変わるから」と、自身の考えを本にまとめる考えは持たなかったという彼の言葉のひとつひとつは、短いながらも考え抜かれた、示唆に富んだものだと思います。この本を手放すことはまずないと思っています。

こちらから購入できます。

彼の教えを受けた方々のお話にも出てくる演奏(指揮)のひとつが、この水戸室内管弦楽団とのライヴ、彼が亡くなる3ヶ月前の演奏です。

リハーサル初日から彼の音楽づくりに魅了されたという楽員さんたち(日本でも屈指の奏者ばかり、というのはご存知の通り)、「リハーサルを増やして欲しい」と彼にお願いしたのだそうです(彼は、リハーサルの短縮を相談に来たと思ったそうですが)。

バッハにしても、ハイドンやモーツァルトにしても、いわゆる「古楽」系の、ピリオド的な、学問的なアプローチではありません。「ここにあるべきはこのような音」という強い意志が感じられます。というより、「古楽的」とか「ロマン的」といったレッテルを貼ることが全く無駄であるということを思い知らされるような演奏なのです。感情過多でもなく、アクの強さといったものも皆無。作品自体が持つ感情を引き出し、聴き手の感情を喚起する演奏とはこういうものなのか、と(正直、朧げではあるのですが)思い知らされます。ぜひ生で聴いてみたかった…。

新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮したCD(シューベルトの『交響曲第5番』とシューマンの『第4番』)について、そして彼の(晩年の)ヴァイオリン演奏の録音についても、今後取り上げてみようと思います。

サン=サーンス『動物の謝肉祭』他:根本英子(ピアノ)他

2021年4月3日 記

こちらから購入できます

【曲目】
サン=サーンス : 動物の謝肉祭《動物学的大幻想曲》 (ルシアン・ガーバンによる連弾版)
ゲイリー・ショッカー : ラブバード
クリフォード・ベンソン : アラベスク
ロッシーニ : 「泥棒かささぎ」序曲
当摩泰久 : フルートとピアノのための「Green」
團伊玖磨 : 「わがうた」より「ひぐらし」
当摩泰久 : 「さぷりエクササイズ」(黒河好子)より ネコ/ウシ/サカサマカッコウ
クリフォード・ベンソン : 小さなパロディ
メキシコ民謡(尾尻雅弘 編) : ラ・クカラーチャ
山田耕筰(当摩泰久 編) : 「赤とんぼ」

【演奏】
根本英子(ピアノ) / ラファエル・ゲーラ(ピアノ) / 三舩優子(ピアノ) / 当摩泰久(ピアノ)
尾尻雅弘(ギター) / 古川仁美(フルート、ピッコロ) / 岩出敏子(ソプラノ)

「CD作ったから送るね!」と連絡が入ったのは2019年の春先、これまで「伴奏者」として彼女がクレジットされたCDはあったのですが、今回は堂々、自身のアルバムではないですか!!いやぁ、目出度い!!

根本英子(以下「英子」)は大学の同級生。専攻も違えば出身地も全く違います。共通の友人がいたわけでもないので、知り合うきっかけというのはほとんど転がっていなかったのですが、ひょんなことから知り合うことになります。

どこか波長が合ったのでしょう、現在でも付き合いの続く数少ない同級生のひとりです。それこそ、CDのライナー・ノーツ(ここには、これまで知らなかった英子がたくさん顔を出しています。逆に私しか知らない英子の顔もあるのですが…笑)に寄せられている文章にもある通り「唯一無二の存在」と言ってもいいでしょう。
(北九州市内で勤務していた頃、「今(仕事で)熊本にいるけど、これから来ない?」と電話してきて私を困惑させたり(すぐに行ける距離と思っていたようです。まぁ、九州人でない限り仕方のないことですが)、私が仕事で上京した際、行きつけとはいえ九州料理がメインの居酒屋でもてなしてくれたのは、後にも先にも英子だけです…笑)

実は、英子と音楽について深く話した記憶もなければ(と言ったら怒られるか…)、彼女の演奏にいつも接していたわけでもないのです。おそらく学生時代は試験(とは言っても「グループ・コンサート」といって公開されていました)でグラナドスの『ゴイェスカス 〜第1曲』を聴いたくらいですし、10年ほど前宮崎で、このCDにも参加されている古川仁美さんとお弟子さんのコンサートに伴奏者として出演したのを聴いたくらいか…。

おそらく、「音楽どっぷり」の関係ではなかったからこそここまで付き合いが続いているのかもしれない、と思っています。しかし、やはり音楽がなければ続いていなかったでしょう。何度か持ちかけられた無理難題のおかげで、私も随分勉強することができたのは確かですし、違う世界を見せてもらったことも大きな刺激になりました。

英子の強みは、「クラシック」一色に染まっていないことでしょう。実際、ロックも演りますし、篠笛の名取でもあります(が、いずれも直に聴いたことはない…笑)。自身がライナー・ノーツに寄せた「自叙伝」を読むと、「ロックな生き方しているな…」と改めて思う次第。そして、「そりゃ、たくさんの仲間に恵まれるはずだよ」とも。
(そうそう、筆(書道の方です)を持たせると、これまた見事なのですよ。)


自由であり、正直であり、気遣いの人。それが根本英子なのです。この楽しいCDにはそれら(“英子○十年分の人生”と言ってもいいでしょう)が全部詰まっています。
自身のアルバムなのですが、ソロはクリフォード・ベンソン作曲の2曲のみというのもいかにも英子らしい。

身近な者の演奏も少し時間を置けば冷静にレビューできるのではないかと思っていたのですが、ここまで書いてみると、どうも難しいようです。

ですから参考までに…、2019年の『レコード芸術』誌9月号にこのCDは取り上げられ、2名の評者はいずれも「準推薦」盤と評価されています。いやいや、誇らしいです。

きっと、英子がこの一枚で終わることはないでしょう。まだまだ何かをやってくれそうですし、それを期待しています。